【千葉常胤の伝承】
千葉氏は桓武天皇から出た平氏の一門で、古代から中世にかけての東国における代表的な豪族である。その第5代が常胤となる。
《海上月越如来》
佐倉市の海隣寺には海上月越如来と称する阿弥陀如来がある。常胤が千葉の海辺に昇る月を見ようとして海岸に行ったとき、海に光り輝く異光が見えた。家臣に命じ網を投げたところ、この仏像が引き揚げられたという。
《おしどり寺》
富里市中沢に鴛鴦(えんおう)寺という寺があった。常胤が狩猟に来て獲物もなく帰ろうとして、ある池に通りかかったとき、2羽のおしどりが水面を動いているのを見つけ、弓矢を取り出し射てみると、矢は見事に命中したのだが、なきがらは水草の中に隠れてしまった。翌日再び捜してみると、矢にあたったのは雄鳥であるが、雌鳥までが雄鳥の翼に首を挟みこんで死んでいた。常胤は「おしどりの夫婦愛はすばらしいものだと聞いていたが、雄鳥の死ぬのを見て雌鳥までが死ぬとは思わなかった」と大いに哀れみ、2羽を厚く葬り冥福を弔うため寺を建立した。これが鴛鴦寺である。
《成田市の常胤伝承》
成田山には源頼朝が鎌倉幕府を開く4年前の文治4年(1188)に、常胤が本堂を再建したという記録がある。南羽鳥の熊野神社には常胤が参詣に訪れており、その折、村民が迎えに出ており、その場所が殿迎(とのむかえ)として小字に残っている。
(北囲護台 小倉 博)