2014年度・2015年度と2年連続関東大会への出場を果たした成田国際高校演劇部3年生の中村恵さんが、同校を卒業するにあたり、3月25日(土)、卒業公演として『繭の中』(2014年度関東大会出場作品)と、あわせて新作の『よわいちから』を上演します。
東日本大震災を題材にした『繭の中』については、これが最後の上演となりそうです。
学年の正式部員として、ただ1人で演劇部をけん引してきた中村さんは、今春より多摩美術大学演劇舞踊コースに進学予定で、さらに演劇の勉強に励むそうです。
【成田国際高校演劇部・中村恵卒業公演
『よわいちから』~弱小演劇部による弱虫宣言~】
▽2017年3月25日(土)
13:30~ 開場
14:00~ 演劇新作『よわいちから』上演
14:45~ 休憩
15:00~ 演 劇『繭の中』(上演時間60分)
▽場所:もりんぴあこうづ(公津の杜コミュニティセンター)2階ギャラリー
▽入場無料
▽主 催:成田国際高校演劇部
▽問合せ:0476-27-2610(成田国際高校・伊三野)
isano@mac.com
▽ブログ:http://narikokugekibu.seesaa.net/
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『よわいちから』
キャスト:中村 恵(成田国際高校>>>多摩美術大学演劇部舞踊コース進学予定)
佐伯 七海(成田国際高校>>>法政大学社会学部進学予定)
大西 一希(成田国際高校>>>日本大学藝術学部演技コース現3年)
十鳥美代子(柏陵高校美術教員)
『繭の中』
キャスト:中村 恵
赤尾 千夏(成田国際高校現1年)
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〔上演作品について〕(顧問 伊三野)
今回の上演作品は、旧作『繭の中』と、新作『よわいちから』の2作品。
『繭の中』は、津波が来ても逃げなかった、ある「よわい」、ひきこもり少年のはなし。
またこの作品では、世界「最弱」のヒーローであるアンパンマンが重要なモチーフになっている。
そして新作『よわいちから』。
ちかごろでは、よわいものいじめとか、弱者切り捨てとかが、あたりまえのように、平然とおこなわれている、ようにみえる。
うっかり弱音でも吐こうもんならすぐさま、どっからか、なに弱音なんか吐いてるんだ、という声がとんできそうだ。
相模原障害者殺傷事件とか。福島避難生徒へのいじめとか。NHKの貧困女子高生へのバッシングとか。
それから、貧困に陥るのは本人の努力が足りなかったせいだ、とする自己責任論とか、はたまたそれにもとづく生活保護受給者への攻撃とか。
ニッポンでは、6人に1人の子どもが貧困状態で、毎年3万人が自殺で死んでいるそうだ。
あからさまに「よわさ」を排斥する社会の、いきぐるしさ・いごこちのわるさ。
だから「よわさ」や「もろさ」、「きずつきやすさ」の復権をめざしたい。
老子とともに「強大處下、柔弱處上。(つよいは下で、よわいが上。)」といおう。弱虫万歳!
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『繭の中』について
東日本大震災関連の新聞記事で、津波に遭った、ひきこもり男性のはなしを読んだ。
長年ひきこもりつづけた男性が、部屋にとじこもったまま自宅ごと津波に流されたという。
はっとした。
わたしがそのときまで「被災者」と、ただ漠然とひとくくりにしてきた人たちの、ひとりひとり異なった顔が、わたしの目のまえにボンヤリ浮かんでくるような気がした。
当然のことながらヒトコトに「被災者」といっても性別も年齢も、職業もちがえば性格もちがう。
習慣やライフスタイルも、価値観や考えかたもさまざまに異なる、その、百人百様の人たちを、地震が、津波がひとしなみに襲った。
すべてを飲み込み押し流す濁流。
そしてそのあとには「ガレキ」だけがのこされた。
だがここでも、「ガレキ」はただのガレキなどではないのだ。
それは被災した人たちにとっては、たいせつな家であり家財、またかけがえのない記憶に結びついた品物でもある。
「ガレキ」も「被災者」もけっしてひとくくりにすることはできない。
たとえば「被災者」のなかには、障害者や外国人といった、いわゆる「災害弱者」の存在もある。
ほんとうに、その《ひとりひとりの震災》にわたしたちの想像力は及んでいるだろうか。
震災を忘れるな、というが、そのまえにわたしたちは、忘れないためにまず、覚える必要がある。