「子どもたちに伝えたい」浪江町消防団『無念』ももとせで上映

東日本大震災から6年が経った3月11日、成田市公津の杜のグループリビング「ももとせ」で、浪江町消防団の『無念』を描いたアニメ作品が、無料上映され、午前・午後あわせて約100人が被災地に思いを馳せました。

『無念』は、福島県浪江町の消防団長を主人公に、震災時、震災後の様子を描いたものです。
瓦礫の下に取り残された多くの命を確認しながら、その後発生した福島第一原子力発電所の事故により、浪江町から避難せざるをえなくなった消防団の無念。
助けられなかった命に、「オラたち許してもらえないべな」「助けておけば助かった命あったべ」「すまねえ、すまねえ」と、今も詫び続けている浪江町消防団の、震災発生から5年までの様子を、証言に基づき、浪江町役場の監修を経て、構成した映画になっています。

映画は、日常生活に震災発生までを刻む時計を重ねた映像から始まります。
そして地震発生。
陸や海での避難の様子、消防団の努力と苦悩、浪江町災害対策本部、救援の様子、そして原子力発電所の爆発・・・と、アニメながら次々にリアルな現実が映し出され、会場は静まり返りました。

鑑賞席には子どもたちの姿もありました。
ももとせと公津の杜小学校は日頃から交流があり、児童の有志は、ももとせでのボランティア活動も行っています。
今回の上映企画には、子どもたちも新聞記事を一緒に読んだり、6年前のことを思い出したり、と準備段階から関わりました。
当日は、映画鑑賞のお客様を迎えるにあたり、20名の児童たちが玄関や会場の清掃、設営の手伝いをした後、『無念』を鑑賞しました。

映画上映の後は、浪江町の現在を取材し、今年の元旦にテレビ放映された映像も流されました。

午後の部に来場した小泉一成成田市長は、浪江町長との会話なども明かし、「被災地はまだまだ震災と葛藤しています。忘れずしっかり支えていきたい」とあいさつしました。


また、昨年4月から、浪江町に派遣されている成田市職員が現状を語り、「皆さんも関心を持ち続けていただきたい」と訴えました。

ももとせを運営し、震災直後には浪江町から避難してきた人を受け入れ、現地で子どもたちのケアをしたり、食糧支援したりしたNPO法人 住まい・まち研究会の夏目幸子理事長は、「忘れるのではなく、今、みんなで何ができるのかを考えましょう」と呼びかけ、「子どもたちに伝えていきたい」と思いを語りました。

3年生の児童たちは「悲しくなりました。大変だったことがよく分かりました」「福島県に募金をして、ちゃんと命を大切にしようと思いました」「今、自分たちがとても平和に暮らせていることが分かりました」と、大切なことを感じ取ったようでした。

会場に備えられた募金箱には、多くの募金が寄せられ、浪江町の支援に戻る成田市職員に、そのまま託されました。

この記事を書いた人

Keitaro Sasaki

Keitaro Sasaki

千葉県成田市在住。成田エリア新聞(紙面版)編集長(2008-2014)以後はオンライン版の当サイトにて成田の情報を発信しています。成田を盛り上げるため、いろんなところに首を突っ込んでいます。