日本の伝統工芸品「木彫」「桐塑」の木目込人形作家・羽藤靖子さんの初個展が、成田ユニバーサル美術館で開催されています。
3月12日(日)まで。
【人形との出会い】
羽藤さんの人形創作の始まりは、衣服の模様やしわを筋彫りにした木で作られた人形に、布をモデラなどで木目込んでいく(着せ込んでいく)「木目込人形」。
趣味でやっていたお姉さんに勧められてのことでした。
やがて、百華人形教室教授・久月人形学院教授にまでなった羽藤さんは、「出来上がった人形に木目込んでいくだけでは面白くない。オリジナルの人形から創りたい」と思うようになり、人形作家の長谷部次郎先生に、先生が亡くなるまで20数年、師事します。
【気の遠くなるような創作過程】
「木彫」「桐塑(とうそ)」で本体を創ることから始まる人形創作。
その過程をうかがうと、気が遠くなるような作業でした。
1体創るのに、1年から1年半かかるということがうなずけます。
《本体創り》
木彫では、いきなり木を彫るのではなく、まずは粘土で見本づくり。
ポーズを決め、なんと人間と同じように裸体を作ってから、着物を作って着せます。
その見本を方眼紙の上に置き、空間はL字定規を使って測りながら、木に転写していくように荒彫りした後、細部まで彫り込んでいきます。
粘土人形は、木彫りが終われば潰すというので驚きです。
桐塑は、乾くと固まる桐の粉を、粘土と同じように使い、人形の本体を創ります。
胡粉(貝の粉)を塗って、本体の完成です。
《着物&小物》
着物は市販の生地を使うこともありますが、イメージに叶う生地がない時は「染めるところから自分でやります」。
さらに柄にも細工を施します。
髪は、墨で何千回も描いていきます。
小物もすべて手作り。
材料には、官製はがきや爪楊枝を使ったりもするとか。
「かんざしは、官製はがきで創って、胡粉を塗って、金箔を張り付けたのよ」と笑います。
【作品ふぉとぎゃらりー】
《お雛さま》
「みんな同じ顔になってしまうので、モデルはいないんです」。
それでもポーズを研究する時には、娘さんやお孫さんに手伝ってもらうとのことで、「なんとなく面影はあるかもしれませんね」。
鑑賞する時には、人形の指使いにも注目♪
師事した長谷部先生の人形の指使いが繊細で、勉強したという羽藤さん。
顔も、長谷部先生の人形になんとなく似ているそうです。
表情が素敵です♪
羽藤さんは「40年、夢中でやってきたら、こうなりました。
人形を創るのは大変だけど、みなさんに観ていただいて、日本の伝統的工芸品、こういう世界もあると知ってもらいたいという気持ちです」と微笑みました。
ひとつひとつの人形から、それぞれの物語が聞こえそうです。
【教室のご案内】
羽藤さんは、月に2回、なごみの米屋飯田町店で教室も開いています。
興味を持たれた方は、一度見学なさってはいかがでしょう。