先月下旬、成田市公津の杜のグループリビング「ももとせ」で、映画『認知症と向き合う』の鑑賞と、監修を担当し本人役で出演した認知症研究の第一人者・杉山孝博ドクターの講演会が行われ、39人が参加、認知症への理解を深める、有意義な時間を過ごしました。
【映画『認知症と向き合う』】
この映画は、認知症によくみられる症状、認知症の人の思いと家族の気持ちの変化、症状の理解、介護者の交流の大切さなど、認知症をめぐる様々な問題を、わかりやすく理解できるように描いたドラマ教材です。
《あらすじ》
認知症の文乃は、娘夫婦、孫と同居しているが、ひどい物忘れや徘徊、家族への暴言・暴力といった症状をあらわし、家族をバラバラにしてしまう。
しかし、ある日、症状がない時の文乃が思いを綴ったノートを目にし、文乃の辛い思いに家族も気づく。
そんなとき、認知症の人や家族が集う「認知症カフェ」を紹介された娘夫婦は、そこで杉山ドクターの講演を聞く。
「まずは認知症の正しい知識を持つこと。認知症の人の世界や気持ちを理解すれば、介護者の苦労は減り、患者さんの症状も改善される」という言葉を聞き、娘夫婦と孫は文乃の言動が理解できるようになる・・・。
杉山先生は、「高齢化の進展に伴い、認知症の人は今後さらに増えることが予測されます。
自治体や関係諸機関・施設で、この映画を購入・鑑賞し、認知症への理解を深めてほしい」と話します。
(お問い合わせは℡03(3535)3631(関東営業推進室)まで)
【杉山先生の講演は 目からウロコの認知症理解】
続いて行われた講演会は、目から鱗が落ちるような内容でした。
認知症という重いテーマですが、ユーモアを交えながら具体的で分かりやすい説明が展開されました。
《認知症の最大の要因は加齢》
認知症は「知的機能の低下によってもたらされる生活障害」で、脳そのものの病変による一次的要因と、脳以外の身体的・精神的ストレスによる二次的要因があり、最大の要因は「加齢」という誰にも訪れるもの。
一次的要因には治療、しかし加齢はいかんともしがたいので、個々に二次的要因を見つけて適切な対策を取るのが、認知症介護で最も重要で効果的な方法だということです。
物忘れがひどくなってきたかなという程度だった人が、骨折して入院してから、どんどん認知症が進んだが、退院したら元に戻ったという例もよくあることだそうです。
《いちばん介護している人に いちばん悪い症状が出ると心得る》
映画の文乃も、第一介護者である実の娘にいちばん辛い思いをさせます。
「認知症の人は感受性が鋭敏。そしてプライドは残っています。
娘に『小学校の先生だったのに、こんなことも出来なくなったの』、コンロを使った時、婿に『アチチですから、止めましょうね』と言われたときに、文乃さんが暴力的になったのは、そのためです。暴れるのは、たいていは介護者の言動に対するリアクションです。
介護は合わせ鏡。穏やかに接すれば相手も穏やかになり、どんな症状もいずれは消えます。
いちばん介護しているのに、いちばん当たられるのは辛いですが、周りの手をたくさん借りてください」。 (続く)