★アーヤと魔女(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作/徳間書店)
イギリスの「ファンタジーの女王」と呼ばれる著者の遺作で、独創的な数多くの作品の中でも、小学校低学年から読むことができるので、おすすめの一冊です。
身よりのない子どもの家で育ったアーヤは、ある日魔女の家にひきとられます。
アーヤは魔法を教えてもらえると思ったのに、毎日こき使われてばっかり!
学校にも行かせてもらえず、すっかり嫌になったアーヤは、自力で魔女に立ち向かいます。
魔女の飼っている黒ネコに助けてもらい、こっそり呪文を作ることにするのですが…。
魔女の家の描写が緻密で、いかにも魔女が使いそうな、わけの分からない材料や魔法道具が次々に出てくるので、読者を飽きさせません。
また、魔女たちにどんないじわるをされても、全然気にしないアーヤの負けん気の強さも面白く、すっかり、強くてかしこいアーヤのファンになりました。
物語はこの一冊で完結するのですが、アーヤの出生の謎や、まだまだ秘密のありそうな魔女の家、いかにも怖ろしい魔女たち、アーヤがこれからどんな魔女になっていくのか等、知りたいことが多く、続きが読みたい!
しかし、続編が出ることは決してない、というのが残念です。
また、作者が「世界中の挿絵画家の中で、彼女の絵が一番好き」と言った、佐竹美保さんによるイラストにも注目。
物語の魅力を存分に引き出していて、書店でも目を引きます。
わたしも、表紙に惹かれて本を手にとった一人です。
特にアーヤが黒ネコと協力して、夜中にこっそり呪文を作るために、何百種類も材料を集める場面は見どころの一つ。
見開きページとなっていて、アーヤが「魔法って、こんなにくさいものばかり使わないと、できないものなの?」と評す魔女の作業部屋の風景は一見の価値あり。
笑ってしまうことうけあいです。(M)