11月18日、公津の杜の「ももとせ」で、恒例となった『杉山ドクターのやさしい医学講座』が開催されました。杉山孝博先生は、長年、認知症に取り組んできた第一人者です。
第一部は、ドキュメンタリー映画『認知症の人とともに生きていく』の鑑賞。杉山先生が訪問診療をしながら看取った認知症患者さんの記録映画は、家族が助け合い、地域支援を受けながらの、在宅医療の可能性を示すものでした。
第二部は講演『認知症の人とよいコミュニケーションをとるための12ヵ条』と質疑応答。
例えば、食事をしたのに食べていないと言い張る、入浴したがらない、会社に行こうとする、暴言を吐くなど、介護者を困らせる症状への対応の仕方が具体的に示され、参加者は目から鱗が落ちたように、大きくうなずいていました。
認知症を理解し、時には嘘も方便で演技者となり、患者の世界に合わせるテクニックをたくさん持つと、介護も楽になることが話されました。
【認知症の人とよいコミュニケーションをとるための12ヵ条】
第1条 記憶になければ本人にとって事実ではないと知る
・事実でも、記憶障害のために本人にとっては真実でないことを知る
第2条 思い込んだことは絶対的な事実です
・「私の夫はもっと若い。こんなおじいさんは夫ではない」といえば、本人にとってはそれが真実。正そうとすると激しい反発が出ます。
まずは受け止めて、別の話題に切り替えるのが現実的。
第3条 プライドを尊重しよう
若い介護職や子どもから「ダメでしょう!」などと言われるとプライドが傷つき怒り出すことがあります。
「○○さんの言われる通りです」「○○してもよろしいですか」「○○していただけますか」「すみません、少し我慢してください」「ありがとうございます」などの言葉を使い続けることが大切。
第4条 昔の世界に合わせよう
・認知症になると「昔の世界」に戻ってしまう特徴があります。30年前に戻ってしまうと妻も子どもも判らなくなります。嘆いて反論しないこと。
第5条 こだわる気持を受け入れて
・道具を使う職人さんだった人が、落ちていた道具類を拾い集めてゴミの山を作りました。こっそり少しずつ捨てて、指摘されたら「誰かが持っていったかも。見張っておくね」ととぼけるのが良い対応。
第6条 ひどく出るのは信頼の証し
・いちばん介護してくれる人に最もひどい症状を示し、時々会う人や目上の人には、しっかりした言動をするのが、認知症の特徴。
子どもが母親に甘えたり、だだをこねたりするのと同じで、絶対的に信頼しているから症状を強く出すと考えるべき。
第7条 嘘も方便と割り切る
・「私の着物を着たでしょう!」と言われたら、「素敵だったので、つい着てしまいました。どこで作ったんですか」というと「お父さんが若い頃に・・・」と話が続いて、怒りの表情が消えたそうです。認知症の人が作った世界に合わせて演技をする。名優は時には悪役を演じることも必要です。
第8条 押してダメなら、引いてみな!
・リハビリや入浴も、意味がわからない人にとっては辛い嫌なこと。ましてや自分だけ服を脱がされるのは屈辱と感じることも。差し支えない時は、無理にすすめないのも対応の1つです。
第9条 良いとこ探しに徹しよう
・できたことができなくなっていくのが認知症。嘆くより、「部屋が汚れているが1人で生活できている」など、できることを見つける考え方をすると気持が楽になります。
第10条 ほめ上手は、介護上手
・「台所を手伝ってくれてありがとう。また明日もお願いね」「『ふるさと』の歌詞、5番までよく覚えられたね。私はとても覚えられないわ」など、できるところを見つけたり、役に立ちたいと思う気持ちを受け止めて褒めると言動や表情が穏やかになるものです。
たとえ迷惑であっても・・・。
第11条 病状の変化に戸惑わない
・認知症の症状は半年か1年単位で進んでいくものです。変化の過程を理解できていれば、混乱は軽くなります。
第12条 サービス利用で、余裕を持とう
・介護は合わせ鏡。介護者がイライラすれば認知症の人も同じ反応を示します。
サービスを大いに利用して心に余裕を持ちましょう。
さらに具体的な例など、杉山先生の文章はインターネットでも読むことができます。お困りの方はぜひお読み下さい!
◆検索方法◆「川崎幸クリニック」→「初めての方へクリニック概要」→「院長ご挨拶」
《資料》
【認知症にならないための10ヵ条】
第1条 脳血管を大切にする
第2条 食生活を整える
第3条 運動に心がける
第4条 飲酒・喫煙が過度にならないようにする
第5条 活動・思考を単調にしないように努める
第6条 イキイキとした生活を
第7条 家族・隣人・社会との人間関係を普段から円滑にしておく
第8条 自らの健康管理に心掛ける
第9条 病気や障害の予防や治療に努める
第10条 寝たきりにならないように心掛ける