劇団わらくが演じる菊池&岸田 今年も国際文化会館ロビーで上演!

成田で立ち上げ、東京に進出した劇団わらくが、一昨年から試みている、成田国際文化会館ロビー公演が、今年も8月26日~28日に行われました。

演目は、日本の代表的な劇作家、菊池寛の『時の氏神』と岸田國士の『葉桜』。
『葉桜』は1926年、『時の氏神』は1924年の作品で、今回はどちらも関東大震災が起こった翌年1924年に設定して上演されました。

【時の氏神】

夫婦げんかの末、妻がまさに家を出て行かんとした時、同じく夫婦げんかで家を飛び出してきた女性がやって来て、数日泊めてほしいと言います。
泊まられてはかなわないと、夫婦は仲の良い素振りで女性に当てつけ、追い返そうと相談。
女性は家に戻り、夫婦も仲良い振りの芝居の過程で、元の鞘に戻るというストーリー。

「時の氏神」とは「ちょうどよいタイミングで現れて仲裁してくれる人」のこと。
お互いに「時の氏神」になる、コメディーのような物語が、来場者を引き込みました。

「実に素敵な作品だと感じました。心がぽかぽかしています。今夜は良い夢が見られそうです」「自分だったら?と当てはめるところが多くあり、笑いっぱなしでした」「とても面白かったです。夫婦は一緒にいないといけないことがわかりました!宿命をまっとうすることが結婚です」「テンポがあって、コメディーのようで面白かったです」「夫婦のあり方を問うているのが、とっても面白かったです。時代設定も大道具・小道具にも世界観があり、素晴らしい作品でした」と、大好評でした。

【葉桜】

見合いの後、決断を迫る母と迫られる娘の会話で構成された物語です。
実は、相手のことが気に入らないでもない娘ですが、はっきり言葉にできません。
シングルマザーの母は、最大限に望まれて嫁に出したいのですが、男性の態度がはっきりしないことに業を煮やしています。
いろいろな問いかけで誘導する母と、徐々に本心をのぞかせる娘。その娘の反応に揺れ動く母心・・・。

 

現代にも通じる母娘の心の機微を演じた、見ごたえある2人芝居に、お客様も「母と娘の愛がひしひしと伝わってきました。母親のせつない気持ちが胸につきささりました」「母親の恋愛講座から、娘への思いが伝わってとっても面白かったです。私もあんな感じになると思います」と、自分を重ね合わせていました。

【劇団わらく勝俣美秋代表に聞く】

DSC_6738『時の氏神』で、小説家の夫を演じ、今公演の演出を担当した劇団わらくの勝俣美秋代表に、千秋楽終了後、お話を伺いました。

―昨年(まくべす)とは、全然違う芝居だったので、お客様がとまどってしまうか、こんなのもあるかなと受け止めてもらえるのか。こういう場所では、エンターテインメントの方がいいのかな・・・とか、考えました。
(普段上演している小劇場と違って)ロビーは、天井に設置できるところがなく、照明が使えないので、こういう不利な条件の中で、どう出来るのか、ということもありました。
暗転の代わりに、歌舞伎の演出のように拍子木を使ったり、『葉桜』の最後の演出「散る葉」は、本当は2~3枚ハラハラと落ちた方が風情がありますが、今回は大きなロビーなので、吹雪にしてみたりしました。
お客様にも不親切だったかな、もっとお客様が芝居に集中しやすい環境を創れたのでは・・と思うところもあり、課題も見えた公演でもありました。

【演者は3人 現代に通じるストーリー ロビー公演だからこその身近さ】

『時の氏神』の出演者は3人、『葉桜』は2人でしたが、演技力の確かさに観客は引き込まれていました。
「演者さんの人数が少ないからこそ、お一人おひとりの技量の素晴らしさを感じました。3人ともかっこよかったです。セットも素敵でした。センスがかっこよかったです」「どちらもほっこりした感じで面白かったです。日常の一場面というところが、見ていて入っていきやすいところだと思いました」「演劇が身近なものに感じました」「とても面白いやりとりでした」「今の時代に通ずるようなところがあって、面白い演劇だったと思います。人柄や生活感がお芝居でよくあらわれていました」「昔の戯曲なのに、まったく昔のように感じませんでした。すごく丁寧に芝居を創っていて、面白く感じました」「目の前で見られて、迫力がありました」。
勝俣代表の思いとは別に、お客様の感想がすべてを物語っているようでした。

この記事を書いた人

Keitaro Sasaki

Keitaro Sasaki

千葉県成田市在住。成田エリア新聞(紙面版)編集長(2008-2014)以後はオンライン版の当サイトにて成田の情報を発信しています。成田を盛り上げるため、いろんなところに首を突っ込んでいます。