ぴーぷる 横浜国際女子マラソンで優勝した 田中智美さん(26)

昨年11月に行われた「第6回横浜国際女子マラソン大会」、ゴール直前で並走していたケニアの選手を振り切り、2時間26分57秒で優勝した、第一生命の田中智美さんは、玉造幼稚園、成田小学校、成田中学校出身と生粋の成田っ子です。
ご両親はレースの前には必ず成田山新勝寺にお詣りに行かれるとか。
田中選手自身も、毎年元旦には、成田市内のご実家から走って成田山に初詣に行くそうです。

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田中さんの幼少期を知る方は「小さい時からかけっこが速かった」といいますが、ご本人は「短距離は苦手でした。後ろの方でビデオに手を振っているような子どもでした」。
成田市ロードレース大会で、小学校5年・6年は優勝しているものの、成田中学校・千葉英和高校時代は、県大会に出場するのがやっと、入賞の経験もないといいます。
玉川大学に進学したのも「先生になるため」。
それでも陸上は続けたくて、陸上部の門を叩きました。
しかし、同校陸上競技部女子長距離チームは「日本大学女子駅伝対抗選手権大会」に16年連続出場(2014年現在)している名門。
実績のない田中さんは、実質の門前払いとも取れる言葉をかけられながらも、翌日、再び直訴し、入部しました。

ご本人いわく「中高時代は『楽しくやりたい』だったのが、大学時代は『勝ちたい、強くなりたい』と思うようになり、ちょこっと伸びた」。
そして、「走り方などを見て」と、田中選手に高い可能性を見い出した第一生命に声を掛けられ、2010年に入社しました。
今では、キャプテンを務め、チームを牽引します。

入社後は、同部所属、12年のロンドン五輪日本代表、あこがれの尾崎好美選手の練習パートナーを務めるなどして実力を蓄え、11年の全日本実業団駅伝では、アンカーとして優勝を果たします。
さらに12年には、全日本実業団ハーフマラソンで優勝。
しかし田中選手のさらなる目標は、フルマラソン出場でした。
田中選手の脳裏には、シドニー五輪でゴールテープを切った高橋尚子選手の姿がずっと焼き付いていました。
「早くマラソンを走りたいとワクワクしていた」という田中選手は、昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンに出場、初マラソンながら2時間26分05秒でいきなり4位入賞という鮮烈デビューを飾ります。
その実績を認められ、7月には初めてナショナルチームの米合宿に参加しました。
野口みずき選手や福士加代子選手と一緒の合宿では、力の差をまざまざと感じましたが、とても勉強になったといいます。

そして2度目のマラソンとなる今回の横浜国際大会。
「前身の東京国際女子マラソン最後の大会となった08年の優勝は尊敬する尾崎好美さん。今大会が最後となる横浜国際は私が優勝する」という強い気持ちでレースに臨んだ田中選手は、終始先頭集団に。
25㎞地点では給水ボトルを取り損ねましたが、ダメージを受けるどころか、給水のため減速した前の選手を抜こうとスピードを上げたという精神力と対応力の高さ。
最後の直線勝負、ケニアの選手に一度は前に出られますが、「スピードのあるケニアの選手にラスト勝負は怖かったけど、声援がすごかったので負けられないと力が出ました。相手は呼吸が苦しそうだったが、自分は楽だった」と抜き返し、一気にゴールテープを切りました。

1ヶ月後の12月には全日本実業団女子駅伝の5区で5人抜き、区間2位の快走を見せました。

田中選手は、10000mはスピードが速くて駆け引きを考える暇がない、マラソンは駆け引きが面白い、名古屋で自分はトラックよりマラソンの方が向いていると感じた、といいます。
42.195㎞を「あっという間に感じます。観ている人の方が長く感じるのでしょうね。走るのが好き。やめようと思ったことはありません」と微笑む田中選手の可能性は無限大です。
154㎝40㎏の小柄な体格で1日20㎞は走ります。
「食が細いので、野口さんに『しっかり食べないと走れないよ』と言われました。マラソンは、ケガなくスタートラインに立つのが大変です」と話しますが、今回の優勝で、今夏、中国の北京で開催される世界選手権出場選手の候補に躍り出ました。
世界選手権で8位入賞、日本人トップになれば、リオデジャネイロ五輪出場が内定します。
「リオを目標に頑張っています。東京五輪も年齢的にはいけると思います。成田市出身のオリンピック選手第1号になりたい」と、力強く話してくれました。

実績がなくても、あきらめず頑張れば、いつかきっと花開く。
子どもたちに証明してくれた田中智美選手を、成田エリアどっとこむも、ず~っと応援したいと思います!

この記事を書いた人

Keitaro Sasaki

Keitaro Sasaki

千葉県成田市在住。成田エリア新聞(紙面版)編集長(2008-2014)以後はオンライン版の当サイトにて成田の情報を発信しています。成田を盛り上げるため、いろんなところに首を突っ込んでいます。